訪問看護
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感情に飲み込まれないために|HSP気質の看護師がマインドフルネスで身につけたこと

深呼吸する訪問看護師
イタドリ
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訪問が終わって車に乗り込んでも、さっきの場面が頭から離れない。利用者さんの悲しみが、そのまま自分の悲しみになってしまう。家に帰っても、誰かの不安を抱えたまま夜を過ごしている。

繊細な気質を持つ看護師なら、こういった経験に心当たりがあるかもしれません。私自身、昔から人の感情や空気の変化に敏感でした。患者さんの表情が少し曇るだけで気になる。スタッフ同士の空気が悪いと緊張する。ご家族が疲れている様子を見ると、自分まで苦しくなる。

看護師として働き始めてから、その敏感さはさらに強くなりました。患者さんに強い口調で言われると、その言葉を何日も引きずる。訪問先でつらい場面があると、帰宅後もずっと考え続けてしまう。「もっと気にしないようになりたい」「もっと強くならなきゃ」と思っていましたが、簡単には変われませんでした。

でも今は、以前より少しだけ「感情に飲み込まれにくく」なった感覚があります。そのきっかけになったのが、マインドフルネスの「いま、ここに戻る」という考え方でした。

HSP気質の看護師が抱えやすい苦しさ

血圧を測定している看護師

HSPという言葉を知った時、「自分に近いかもしれない」と感じました。HSPは病気ではなく、刺激や感情を深く受け取りやすい気質だと言われています。看護の仕事では、この敏感さが長所になることもあります。

患者さんの小さな変化に気づける。言葉にならない不安を感じ取れる。相手の気持ちを想像しやすい。共感力が高いことは、看護師としての強みです。ですがその反面、相手の感情を抱え込みすぎてしまうことがあります。相手の悲しみや不安が、そのまま自分の中に流れ込んでくるような感覚です。

心理学では、こうした状態を「情動感染」と呼ぶことがあります。相手の感情が無意識のうちに自分へ移り、自分の感情との境界が曖昧になってしまう状態です。繊細な人ほど、この情動感染が自然に、そして深く起こりやすいように感じます。

私は長い間、「敏感な自分を変えなければ」と思っていました。でも本当に必要だったのは、鈍感になることではなく、自分の心を守る方法を知ることでした。

共感と「感情移入しすぎること」は違う

心を手渡すシーン

以前の私は、「良い看護師ほど、相手の気持ちを深く理解できるものだ」と思っていました。でも、マインドフルネスを学ぶ中で、共感と感情移入しすぎることは違うのだと少しずつ理解するようになりました。

共感は、「あなたの気持ちがわかります」と相手に寄り添うことです。一方で、感情移入が強くなりすぎると、相手の感情と自分の感情の区別がつかなくなっていきます。

相手の苦しみを支えるつもりが、いつの間にか自分自身もその苦しみの中に入り込んでしまう。それが続くと、仕事が終わったあとも気持ちが切り替わらず、少しずつ消耗していきます。だからこそ、「寄り添いながらも、自分を見失わない感覚」が大切なのだと思うようになりました。

マインドフルネスとの出会い

瞑想する女性

マインドフルネスを知ったのは、疲れがかなり強くなっていた頃でした。最初は「瞑想のことかな?」くらいの認識でしたが、「いま、この瞬間に意識を向ける」という考え方に興味を持ちました。

当時の私は、不安や焦りを感じるたびに、「こんなふうに感じる自分はダメだ」と否定していました。でもマインドフルネスでは、感情を無理に消そうとはしません。

「いま、自分は不安を感じている」「疲れている」「緊張している」と、まず気づくことを大切にします。過去を引きずり続けるのでもなく、未来の不安を延々と考え続けるのでもなく、「いま、ここ」に戻る。その感覚を知ってから、少しずつ心が楽になっていきました。

「いま、ここ」に戻ると、感情との距離感が変わる

穏やかな海

マインドフルネスを続けて、一番変わったことがあります。それは、「感情に飲み込まれ続ける時間」が減ったことです。

以前の私は、不安になると、その不安の中に完全に入り込んでいました。失敗した場面を何度も思い出す。未来の不安を先回りして考える。頭の中がずっと忙しい状態でした。

でも今は、「いま、自分は不安を感じているな」と、一歩離れて見られる瞬間があります。もちろん、嫌なことが平気になるわけではありません。

悲しい場面では悲しいし、つらい場面では心も揺れます。それでも、「感情そのもの」と「感情に飲み込まれている状態」は違うのだと感じるようになりました。

感情を否定せずに受け取りながら、その中に沈み込みすぎない。その距離感が、少しずつ持てるようになった気がしています。

看護師の忙しい日常に取り入れやすい取り組み

胸に手を当てる女性

マインドフルネスというと、長時間座って瞑想するイメージがあるかもしれません。ですが実際には、仕事の合間に短く行うだけでも役立つと感じています。

① 感情を「実況する」

感情が流れ込んでくる瞬間に、頭の中でそっと実況します。

「いま、私は〇〇さんの不安を受け取っている」
「いま、この場の緊張感を感じている」

評価しない。解決しようとしない。ただ、気づいて名前をつける。これはマインドフルネスで「ラベリング」と呼ばれる方法に近いものです。感情に名前をつけるだけで、自分と感情の間に少し隙間ができます。

② 呼吸で「いま、ここ」に戻る

感情に引っ張られていると気づいたとき、私は呼吸に意識を向けます。
訪問先の玄関前で、チャイムを押す前に一呼吸する。
訪問が終わって車に乗ったら、深呼吸を3回する。

呼吸は、常に「いま」にあります。息を吸っている。吐いている。その感覚に意識を向けるだけで、頭の中の不安や緊張から少し戻ってこられる感覚があります。

③ 足の裏の感覚を意識する

忙しい時ほど、頭の中だけで動いてしまうことがあります。

そんな時は、床に触れている足の裏の感覚を意識します。
「ちゃんと立っている」「地面に支えられている」と感じるだけでも、意識が少し現在に戻ってきます。

短い時間でも、自分を落ち着かせる助けになります。

「共鳴しながら、流されない」という感覚

深呼吸する森 マインドフルネス

「感情に距離を置く」というと、冷たい看護師になるようで抵抗を感じる人もいるかもしれません。私も最初はそうでした。でも、距離を置くことと、寄り添わないことは別のことです。

マインドフルネスが目指しているのは、感情を切り捨てることではありません。感情をあるがまま受け取りながら、そこに飲み込まれない状態です。相手の悲しみに共鳴しながら、自分の輪郭は保っている。

私はこの感覚を、「共鳴しながら、流されない」と言葉にしています。完全にできる日ばかりではありません。それでも、この感覚を知っているだけで、仕事後の疲れ方は以前よりずいぶん変わりました。

おわりに

夕暮れの木々と空

看護師の仕事は、人と深く関わる仕事です。だからこそ、優しい人ほど疲れてしまうことがあります。

感情に影響を受けやすいことは、決して弱さではありません。それは、人の痛みに気づける力でもあります。ただ、そのまま抱え込み続けると、自分自身が苦しくなってしまいます。

マインドフルネスは、劇的に何かを変えるものではないかもしれません。それでも、「いま、自分はこう感じている」と気づく習慣は、少しずつ心を支えてくれるように思います。

もし今、感情に飲み込まれて苦しいと感じているなら、まずは深呼吸を一回だけしてみてください。「いま、ここ」に戻る小さな感覚が、長く働き続けるための静かな支えになるかもしれません。

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