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「共感しすぎて疲れる」の本当の原因は、優しさじゃなかった|看護師の共感疲労

静かな湖面
イタドリ
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患者さんの苦しみを聞いたあと、家に帰っても心がずっと重い。
「私、共感しすぎなのかな」「もっと割り切れる性格だったらいいのに」
そんなふうに、自分の優しさを責めたことはありませんか?

病棟・訪問看護で働いてきた私も、ずっとそう思っていました。
でも、看護師の「共感疲労」についての研究を調べてみたら、意外なことがわかったんです。
疲れの原因は「共感しすぎ」ではありませんでした。

その疲れには「共感疲労」という名前があります

スクラブを着て廊下を歩く看護師

患者さんの苦しみを受け止め続けて、心と体が消耗してしまう。
これには「共感疲労」という名前がついていて、世界中で研究されている現象です。

あなたが弱いから起きるものでも、性格の欠点でもありません。苦しんでいる人に寄り添う仕事をしている人なら、誰にでも起こりうるものだとされています。

よく似た言葉に「燃え尽き症候群(バーンアウト)」がありますが、少し違います。
燃え尽きが忙しさや職場のストレスで「じわじわ」すり減っていくのに対して、共感疲労は患者さんの苦しみを受け止め続けた末に「ある日突然」やってくるのが特徴だといわれています(Figley, 1995)。

「昨日まで普通に働けていたのに、急に患者さんの顔を見るのがつらくなった」
もし心当たりがあるなら、それは共感疲労のサインかもしれません。

研究でわかった、意外な原因

ノートと研究資料

ここからが、私が一番驚いたところです。

心理学の研究では、「共感」と「思いやり(コンパッション)」は別のものとして区別されています(福森・徳島大学)。

共感……相手の苦しみが、そのまま自分の中に流れ込んでくる状態
思いやり……相手の苦しみをわかったうえで、少し離れたところから「力になりたい」と思える状態

たとえるなら、溺れている人と一緒に水に入ってしまうのが共感。
浮き輪を投げられる位置に立っているのが思いやりです。

そして研究では、共感疲労の原因は「共感が多すぎること」ではなく、この「少し離れて思いやる力」が足りなくなることだと指摘されています。

つまり、順番が逆だったんです。
優しすぎるから疲れるのではなく、優しさを支える「立ち位置」を失ったときに疲れてしまう。
直すべきなのは性格ではなく、立ち位置のほうでした。

あなたはどのタイプ?看護師の共感4タイプ

光の差す森の道

精神科の看護師93名を調べた研究(光貞・宮野)では、共感のあり方が4つのタイプに分けられています。

共有型(共感が高い・疲れも大きい)……37.6%
不全型(共感が低い・疲れも小さい)……36.5%
両貧型(共感が低い・疲れは大きい)……14.1%
両向型(共感が高い・疲れは小さい)……11.8%

一番多かったのは、共感は高いのに疲れてしまっている「共有型」で、約4割でした。
「患者さんの気持ちがわかりすぎてつらい」と感じているのは、あなただけではないということです。

そしてもうひとつ注目してほしいのが、少数ながら「共感が高いのに疲れていない」両向型が存在することです。
共感の高さと疲れは、必ずセットではありません。高い共感を持ったまま、疲れずに働ける道があるということを、この数字は示しています。

私が「一緒に溺れていた」ころの話

静かな湖面

看護学生のころ、受け持った患者さんのことを今でも覚えています。

その方はがんで入退院を繰り返していましたが、ご本人には病名が告知されていませんでした。
「治療しているのに、どうして良くならないのか」
「この病院は本当のことを教えてくれているのか」
良くならない身体のつらさと、答えの見えない不安。行き場のないその思いは、そばにいる学生の私にまっすぐ向かってきました。

当時の私は、その言葉を全部そのまま受け止めることしかできませんでした。何も答えられない自分を責めて、実習が終わっても患者さんの言葉が頭から離れませんでした。
今思えば、あのときの私は「溺れている人と一緒に水に入っていた」状態だったのだと思います。

看護師として経験を積んだ今なら、同じ場面でも少し違う動きができます。
言葉の重さは受け止める。そのうえで、「これはすぐに対応が必要な訴えなのか、それとも、ずっと抱えてきた孤独や不安があふれ出たものなのか」を見極めて、必要なら医師や家族に繋ぐところまで動けます。

患者さんへの思いが減ったわけではありません。むしろ、水から上がって浮き輪を投げられる位置に立てるようになったから、あのころより力になれることが増えたと感じています。
これが、研究でいう「共感」と「思いやり(コンパッション)」の違いなのだと、あとから知りました。

優しさを手放さなくていい

夕暮れのやわらかい光

「共感しすぎる性格を直さなきゃ」
私がずっと思い込んでいたこれは、研究によれば的外れでした。

直すのは性格ではなく、立ち位置。
相手の苦しみをわかったうえで、水に入らず浮き輪を投げられる場所に立つ。その力は生まれつきのものではなく、あとから身につけられるとされています。

具体的にどうすればいいのかは、研究で効果が確かめられた方法だけを集めて、別の記事で詳しく紹介しています。
ひとつだけ先にお伝えすると、効果が確認されている方法のひとつが「マインドフルネス」です。よかったらこちらの記事も読んでみてください。

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あなたの優しさは、直すものではなく、守るものです。
今日も誰かの苦しみのそばに立っているあなたが、水に入らずにいられますように。

参考文献

・Figley, C.R.(1995)Compassion Fatigue: Coping with Secondary Traumatic Stress Disorder in Those Who Treat the Traumatized.
・福森崇貴「支援者の共感疲労といかに向き合うか」グリーフ&ビリーブメント研究 第5号(徳島大学)
・光貞美香・宮野綾子「精神科病院における認知症患者への看護師の共感に関する要因の検討」第48回日本精神科看護学術集会

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イタドリ
イタドリ
現役訪問看護師|HSP当事者
看護師になって30年以上経ちました。
僻地の有床診療所、地域の中規模病院、大学病院を経て、訪問看護は20年以上になりました。
某大学では学外講師を務めています。
やや敏感な気質を持ちながら、
それでも現場で積み上げてきた経験を活かして、訪問看護の実践知や役立つ情報を発信していきます。
窓の外を眺めるように、在宅ケアとHSPという生き方をひそかに綴るブログです。
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