看護師の共感疲労セルフケア5選|研究で効果が確認された方法だけ集めました
「共感疲労には早めのケアが大切」とわかっても、じゃあ何をすればいいの?と思いますよね。
ネットには「気分転換しましょう」のようなふわっとした情報があふれていますが、この記事では、看護師を対象にした研究のまとめ(乾・宮林, 2023ほか)で実際に効果が確認された方法にしぼって紹介します。
どれも今日から、お金をかけずに始められるものです。
※共感疲労って何?という方は、先にこちらをどうぞ

① マインドフルネス——効果の裏付けが一番しっかりしている

看護師の共感疲労研究のまとめでは、マインドフルネスのトレーニングが共感疲労とバーンアウトの両方を下げたと報告されています(乾・宮林, 2023)。
マインドフルネスとは、「今この瞬間」に注意を向ける心の練習です。過去の後悔(あの対応でよかったのかな)と未来の不安(明日の訪問が憂うつだな)から、いったん今に戻ってくる時間をつくります。
患者さんの苦しみを引きずりやすい人ほど、頭の中が「過去」に占領されがちです。1日5分、呼吸に意識を向けるだけでも練習になります。
詳しいやり方はこちらの記事に書いています。

② マイクロブレイク——私は橋の上で川を眺めています

「休憩なんて取れる職場じゃない」という声が聞こえてきそうですが、研究で効果が確認されたのは、まとまった休憩ではなく数分の小さな息抜き(マイクロブレイク)です(乾・宮林, 2023)。
私の場合は、訪問看護の移動時間を使っています。
次の訪問先に向かう途中、時間に少し余裕があれば、公園の横で自転車を数分とめて木々や花壇を眺めます。ルートによっては、橋の上で止まって川面をながめることもあります。
ほんの数分ですが、前の訪問で受け止めた気持ちをここでいったん降ろして、次の患者さんのところへ向かえます。
病棟勤務なら、ナースステーションに戻る前に廊下の窓から外を10秒眺める、休憩室でお茶を一口ゆっくり飲む——それで十分です。ポイントは「仕事の景色から一瞬離れる」ことにあります。
③ 感情を言葉にする——ひとりで抱えない仕組みをつくる

共感疲労の研究では、感情を表に出して共有できる場があることが、一貫して回復の助けになるとされています。チームの支え合いや上司の支持的な関わりが回復を促したという報告は、精神科でも小児科でも共通しています(礒松ら, 2015/米村)。
大事なのは、カンファレンスのような立派な場でなくていいということです。
「今日の患者さん、こんなふうに言っていてね」と同僚に話す。その数分のおしゃべりが、心に溜まったものを流してくれます。
もし職場に話せる相手がいないなら、家族や友人に(患者さんの個人情報は伏せて)「今日はしんどい日だった」と口に出すだけでも違います。書くことが好きな人は、ノートに気持ちを書き出すのも同じ効果があります。
「話す」だけでなく「書く」のも効きます。頭の中のぐるぐるをノートに書き出す「ジャーナリング」は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

④ 休息の質を上げる——「休んでも取れない疲れ」への対策

共感疲労のサインのひとつが「休んでも取れない深い疲労」です(温井ら, 2023)。緩和ケア病棟の看護師1,000人以上を調べた研究でも、休暇への満足感が心の回復力と関連していました(豊本ら)。
夜勤や不規則勤務の看護師にとって、量(睡眠時間)を増やすのが難しいなら、質を上げるほうが現実的です。
寝る前のスマホをやめて①のマインドフルネスに置き換える、寝具を見直す、休日に「何もしない予定」を先に入れておく——このあたりから始めてみてください。
私の寝具の見直しについては、こちらの記事に書いています。

⑤ 「よかったこと」を拾う——共感満足を育てる

最後は少し意外な方法です。
研究では、ケアから得られるやりがいや充実感(共感満足)が、共感疲労から守ってくれるクッションになるとされています(Stamm, 2009)。
つらさは放っておいても目に入ってきますが、よかったことは意識しないと流れていってしまいます。
「患者さんが今日は笑ってくれた」「ありがとうと言われた」——1日の終わりに、そんな小さな場面をひとつだけ思い出してみてください。
疲れを減らすだけでなく、守ってくれるものを増やす。この両方がそろうと、心はぐっと安定します。
まとめ:それでも消えない疲れは、環境のサインかもしれない

① マインドフルネス……1日5分、今この瞬間に戻る練習
② マイクロブレイク……数分だけ仕事の景色から離れる
③ 感情を言葉にする……何気ないおしゃべりでいい
④ 休息の質を上げる……量を増やせないなら質から
⑤ よかったことを拾う……守ってくれるクッションを増やす
ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。
研究では、共感疲労には職場の環境——サポートのなさ、相談できない雰囲気、過重な負担——が深く関わっているとされています。セルフケアをしても消えない疲れは、あなたの努力不足ではなく、環境からのサインかもしれません。
その場合の考え方は、また別の記事で書く予定です。
「そもそも共感しすぎる性格を直したい」と思っている方には、こちらの記事を。あなたの優しさは直さなくていい、という研究の話です。

参考文献
・乾美由紀・宮林郁子(2023)「看護師の共感疲労に関する過去5年間の研究の動向」Seisen Jogakuin College Journal of Nursing
・温井由美ら(2023)「看護師における共感疲労の概念分析」日本看護科学会誌 Vol.43
・礒松尚美ら(2015)「精神科看護師の共感疲労体験の分析」日本看護学会論文集 精神看護
・米村敬子「小児看護における看護師の共感疲労体験の分析」熊本保健科学大学
・豊本香里ら「緩和ケア病棟に勤務する看護師のレジリエンスに関連する要因の検討」看護ケアサイエンス学会誌 第21巻1号
・Stamm, B.H.(2009)Professional Quality of Life: Compassion Satisfaction and Fatigue Version 5 (ProQOL).
