考え方のクセに気づくとラクになる。看護師のためのやさしい認知行動療法
同じミスをしても、すぐ切り替えられる人と、何日も引きずってしまう人がいます。「私はダメだな…」と、帰り道でずっと自分を責めてしまう。あの差はなんだろうと、思ったことはありませんか。
実は、性格の差ではなく「考え方のクセ」の差だと言われています。この記事では、そのクセに自分で気づく方法「認知行動療法」を、むずかしい言葉を使わずに紹介します。
認知行動療法は「自分で自分の味方になる練習」です

認知行動療法(CBT)は、心療内科などで使われている心理療法のひとつです。名前はいかめしいですが、やることはシンプルです。
「出来事そのもの」ではなく「出来事の受け取り方」に目を向けて、受け取り方の幅を広げていきます。
看護研究の論文に、こんな一文があります。「認知行動療法の最大の目的は、自分で自分のカウンセリングができるようになること」。
誰かに治してもらう方法ではなく、自分が自分の味方になるための練習なんです。
※出典:堀將博「患者が認知行動療法をセルフで活用するための一考察」
看護師にありがちな「考え方のクセ」5つ

うつ病の看護研究で紹介されている「認知のゆがみ」の実例を、看護師の日常に置きかえてみます。心当たりがあるか、眺めてみてください。
①「完璧にこなさなければ」…ミスゼロを自分に課してしまう
②「失敗したのは私の能力が低いから」…忙しさや環境のせいでも、全部自分のせいにする
③「私はこれからもずっとダメ」…一度の失敗を、未来ぜんぶに広げてしまう
④「うまくいったのは、たまたま」…成功は偶然、失敗は実力、と数えてしまう
⑤「嫌われたに違いない」…相手の素っ気ない反応を、悪いほうに決めつけてしまう
大事なのは、クセを直すことではありません。「あ、いま④のクセが出てるな」と気づくだけで十分です。それが認知行動療法の第一歩になります。
※参考:三上勇気「看護介入としての認知・行動的アプローチ」
新人のころ、「もうだめだ」と泣いた日の話

少しだけ、私自身の話をさせてください。新人のころ、仕事で失敗をしたことがありました。そのとき私は「能力のない新人だと評価されたに違いない」「もうだめだ」と思い込んで、泣いていました。
いま振り返ると、③と⑤のクセに同時にはまっていたのだと思います。一度の失敗で未来のすべてが決まるわけではありません。それなのに当時は、そうとしか考えられませんでした。
考え方のクセは、本人が気づかないうちに心を占領します。だからこそ「気づく練習」に意味があるんです。クセに名前がつくだけで、あのころの涙の何割かは減らせたはずだと、いまは思います。
今日からできる2つのセルフケア

①紙に書き出して、距離を置く。モヤモヤした出来事を、紙に書き出してみてください。頭の中にあるうちは、考えと自分がくっついています。紙の上に出すと、少し離れて眺められます。これを「外在化」と呼びます。
書いたら、さっきの5つのクセと見比べてみます。「これ、③だ」と番号がつくだけで、気持ちは少し軽くなりますよ。「書き出す」やり方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。

②1日1回、自分をほめて記録する。どんな小さなことでもかまいません。「今日は時間内に記録を書けた」「休憩をちゃんと取れた」。1日1つ、ノートやスマホにメモします。
看護研究では、この「毎日自分をほめて記録する」方法と、自己肯定感の高さに強いつながりが報告されています。「ほめるところなんてない」と感じる日は、「今日も出勤した」で十分です。
つらさが続くときは、専門家を頼ってください

ここで紹介したのは、あくまでセルフケアとしての方法です。眠れない日が続く、食欲がない、涙が止まらない。そんなサインがあるときは、セルフケアでがんばらずに、心療内科や職場の相談窓口を頼ってくださいね。
頼ることも、立派なセルフケアのひとつです。
まとめ:クセに気づけた日から、変わり始めています

考え方のクセは、長年かけて身についたものです。すぐには変わりません。でも「いま、あのクセが出てた」と気づけたら、その日からもう変わり始めています。
明日、仕事でモヤッとしたら、帰り道に思い出してみてください。「これは何番のクセかな?」って。それだけでいいんです。
