「職場を変えたら共感疲労が消えた」は本当か|研究と私の体験から
セルフケアを頑張っても、疲れが消えない。
「私の心が弱いから」「もっと上手に切り替えられたら」——そうやって自分の側に原因を探し続けていませんか?
看護師の共感疲労の研究を調べていくと、はっきり見えてくることがあります。
共感疲労の大きさは、個人の性格だけでなく、職場の環境で大きく変わるということです。
この記事では、その研究結果と、私自身が「職場が変わっただけで、こんなに違うのか」と実感した体験を書きます。
研究が示す「環境要因」——同じ人でも、職場で疲れ方が変わる
福祉施設の職員を対象にした研究では、組織のサポートが手厚いと感じている人ほど、共感疲労が低く、仕事のやりがい(共感満足)が高いという結果が出ています(重橋, 2022)。同じ研究では、「辞めたい」と思っている人ほど共感疲労が高いことも示されました。
また、緩和ケア病棟の看護師1,000人以上を調べた大規模な研究では、心の回復力が保たれている人に共通していたのは、次のような条件でした(豊本ら)。
・希望して今の部署に配属されている
・仕事にやりがいを感じられている
・休暇の取り方に満足している
・カンファレンスに参加できている
注目してほしいのは、この一覧に「ストレスに強い性格」が入っていないことです。
挙がっているのはどれも、環境や仕組みの話です。つまり、共感疲労に苦しむかどうかは、あなたの心の強さの問題である前に、どんな職場に身を置いているかの問題でもあるのです。
私の体験:「相談したら責められた職場」と「おかえりと言ってくれる職場」
私は訪問看護で、正反対の2つの職場を経験しました。
最初の職場では、新人のころ、ある患者さんからセクハラに当たる言動を受けていました。勇気を出して先輩に相談したら、「あなたの対応がよくなかったのでは」と返されました。
それきり、私はその患者さんのことを誰にも話せなくなり、つらい訪問をひとりで抱え続けました。
次の職場は、違いました。
訪問から事務所に戻ると、みんなが「おかえり」と声をかけてくれます。報告書を書きながら、「患者さんがこんなふうに言っていてね」という話を気軽にできて、気持ちが軽くなってから家に帰れました。
やっている仕事は同じ訪問看護です。私の性格も、共感しやすさも、何も変わっていません。
変わったのは職場だけ。それなのに、心の消耗のしかたはまったく別ものでした。
研究が言う「組織のサポート」とは、立派な制度のことではなく、この「おかえり」と何気ないおしゃべりのことだったのだと、身をもって知りました。
「逃げ」ではなく「環境調整」——看護師なら知っている考え方
それでも「職場を変えるのは逃げな気がする」と感じる人は多いと思います。私もそうでした。
でも考えてみてください。私たちは患者さんに対して、環境調整を当たり前にしています。眠れない患者さんがいたら、本人の努力を求める前に、部屋の明るさや音を整えますよね。
自分に対してだけ「環境ではなく根性で乗り切れ」というのは、筋が通りません。
研究が示すとおり、共感疲労には環境要因が深く関わっています。環境を変えることは逃げではなく、看護師が一番よく知っているはずの、正当なケアのひとつです。
職場を選ぶときに見るべき3つのポイント
私の体験と研究を重ねると、次の職場を考えるときに見るべきポイントはこの3つです。
1. 気軽に話せる雰囲気があるか……面接や見学のとき、スタッフ同士の会話の様子を見る。カンファレンスや振り返りの場があるか聞いてみる
2. 困りごとへの対応の仕組みがあるか……患者さんからの暴力やハラスメントがあったとき、どう対応しているかを質問する。まともな職場なら、答えを持っています
3. 休みが実際に取れているか……有休の消化率や、希望休の通りやすさ。数字で聞くのがおすすめです
ただ、こうした内部の事情は、求人票だけではわかりません。だからこそ、内部の情報を持っている人に聞くのが近道です。
情報収集に使えるサービス
私が調べた範囲で、共感疲労に悩む看護師さんの情報収集に使えるサービスを紹介します。
ナースJJは看護師専門の転職サイトです。登録には氏名や電話番号の入力が必要ですが、無料で使えて、上に書いたような職場の内部事情を転職相談の中で聞けます。「今すぐ転職」と決めていなくても、情報収集から始められます。
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まとめ:あなたの優しさが活きる場所は、きっとある
・研究では、共感疲労の大きさは職場のサポート環境で変わることが示されています
・私自身、職場が変わっただけで心の消耗がまったく違いました
・環境を変えることは逃げではなく、自分への環境調整です
もちろん、転職だけが答えではありません。今の職場でできるセルフケアはこちらにまとめています。

そして、「共感しすぎる自分を直したい」と思っているあなたには、この記事を。直すべきなのは優しさではなかった、という研究の話です。

参考文献
・重橋史朗(2022)「施設内暴力と職員の共感疲労・満足について①」中村学園大学発達支援センター研究紀要 第16号
・豊本香里ら「緩和ケア病棟に勤務する看護師のレジリエンスに関連する要因の検討」看護ケアサイエンス学会誌 第21巻1号
