病棟看護師と訪問看護師、働き方はこんなに違う
訪問看護師の働き方は、病院看護師とどう違うのでしょうか。同じ看護師でも、職場が変わるだけでこれほど日常が変わるのかと、転職した当初は驚くことばかりでした。
同じ「看護師」という資格を持っていても、病院と訪問看護では、日々の働き方がまるで別の仕事のように違います。
今回は、両方を経験した視点から、その違いをできるだけありのままにお伝えしたいと思います。
| 項目 | 病院看護師 | 訪問看護師 |
|---|---|---|
| 職場環境 | チームで動く | 基本ひとりで訪問 |
| 時間 | 決められた流れ | 自分で組み立てる |
| 患者さんとの関係 | 短期間が多い | 月単位〜年単位で長い |
| 負担 | 夜勤・緊急対応 | 移動・ひとりで判断する重さ |
| 給与 | 夜勤手当が大きい | 日勤中心 報奨金などの手当 |
1. 職場環境の違い|チームの中か、一人かの差は大きい

病院では、医師・他の看護師・リハビリスタッフなど、多職種が常に近くにいます。何かあればすぐに相談でき、緊急時も一人で抱え込まずに済む安心感があります。
一方、訪問看護師は利用者さんのご自宅に一人で伺います。判断も、声かけも、処置も、基本的にすべて自分一人。「今これで合っているだろうか」と思っても、その場で相談できる同僚はいません。
これが怖いと感じる人もいれば、自分のペースで動けると感じる人もいます。どちらが合うかは、その人の性格によって大きく変わります。
訪問看護に入ったばかりの頃に感じた「ひとりで背負う」ということ
訪問看護に入ったばかりの頃のことです。寝たきりの患者さんで、お腹の張り(腹部膨満)がありました。便は出ておらず、腸の動く音(腸蠕動音)もやや弱め。ただ、ご本人は痛みなどははっきり訴えません。熱もなく、同居のご家族も高齢でした。
お腹の張りが強くなってきているのが、どうしても気になる。でも受診は簡単ではありません。訪問診療は入っておらず、少し離れて暮らすお子さんが車を出して、その都度受診に連れて行ってくれている状況でした。頭の中では「腸閉塞(イレウス)かもしれない」とよぎります。
「こういう状態になったら救急車を呼んでください」とご家族に伝えはするものの、ご本人の訴えがはっきりしないぶん、判断は難しいかもしれない。病院なら「経過観察」と次の勤務者に申し送れば済みます。でも訪問では、次の訪問予定は1週間後。今すぐ重体というわけでもないので、ほかのスタッフに気軽に臨時訪問をお願いするのもためらわれます。臨時訪問には料金も発生します。
結局、「くれぐれもお願いします」と、これから見てほしいこと、いつもと違ったらすぐステーションに電話してほしいことを、ご家族に細かく説明しました。このとき、病院との違いを強く感じたんです。
訪問看護では「自分の観察と判断が、次に誰かが診てくれるまでの“最後の砦”になる」場面があります。チームですぐ相談できる病院との、いちばん大きな違いかもしれません。
2. 時間の使い方の違い|決められた流れか、自分で組み立てるか

病院では、申し送り・処置・検温・記録など、ある程度決まった流れの中で動きます。突発的なことも多いですが、基本的なスケジュールは組織が決めてくれています。
訪問看護では、自分でスケジュールを管理する力が求められます。今日はどの利用者さんを何時に訪問するか、移動時間はどう確保するか、記録はいつ書くか。
段取りが得意な人には向いていますが、管理が苦手な人には最初は戸惑うかもしれません。
訪問看護師のある1日
病院は「朝の申し送り→検温→処置…」と決められた流れに沿って分刻みで動きます。訪問看護は、訪問の順番も移動も記録のタイミングも、自分で段取りします。ある1日を紹介します。
- 9:00/始業。ステーションでミーティング。全員で5分ほど一斉に掃除。スケジュール変更や気がかりなことの申し送りもこのときに。少し時間があれば看護計画の見直しや報告書の下書きも進めておく。
- 9:30ごろ/1件目に10時到着できるよう出発。
- 午前/2件訪問。
- 昼休憩/コンビニやスーパーのイートインで。天気がよければ公園で食べることも。
- 午後/さらに3〜4件訪問。1件終わるごとに端末で記録を済ませる。入力しきれないときは、せめてバイタルだけでも入れておく。本日分の記録は次回の日付でコピーして“下書き”にしておくと、次回に経過の続きを書くのがぐっと楽になる。
- 訪問終了後/事務所へ戻り、関係機関への電話連絡や書類の整理。
- 終業/共有アプリでその日の報告をして仕事を終える。
決められた流れを動く病院とは違い、訪問看護は移動も記録も自分で組み立てるのが特徴です。慣れると、この自由度が働きやすさにつながります。
3. 患者さんとの関係性の違い|短期間か、長くつきあうか

病院では、患者さんが退院すればそこで関係は終わります。
回復していく姿を見届けられる喜びがある一方、深く関わる時間は限られています。
訪問看護では、同じ利用者さんのお宅に何ヶ月・何年と通い続けることが多いです。その方の生活リズム・好きな話題・家族関係まで自然と知るようになります。
「また来てくれたね」と顔をほころばせてくれる瞬間は、この仕事ならではの喜びです。
「介護のために仕事を辞めようか」と相談された日
訪問が長く続いているあるお宅で、ご家族から「介護のために、仕事を辞めようかと考えている」というお話を聴いたことがあります。
私は「あくまで私個人の意見ですが」と前置きしたうえで、こんなことをお伝えしました。介護はたしかに長い。でも、いつまでも同じ状態とはかぎらないこと。状況が変わったときに、ゼロから新しく就職活動をするより、慣れた仕事を持っているほうが心強いこと。そして、あなたの人生はあなたのものなのだから——と。
結果的に、その方は離職はされませんでした。今は、介護と仕事を両立できるやり方を、ご自身で見つけて続けていらっしゃいます。
病院では、患者さんと関わるのは入院しているあいだだけ。退院されれば、その後の暮らしを見届けることはほとんどありません。訪問看護は月単位・年単位で同じお宅にうかがうぶん、ご家族の暮らしや選択にもそっと寄り添う場面が出てきます。もちろん口を出しすぎるのは禁物。だからこそ「あくまで私の意見ですが」と前置きする。長くつきあうからこその距離感を、日々考えさせられます。
4. 体力・精神面の負担の違い

病院看護師は夜勤があり、体内時計が乱れやすいのが大きな負担です。また、急変対応や多重業務によるプレッシャーも相当なものがあります。
訪問看護師は基本的に日勤のみのことが多く、夜勤がない分、生活リズムは安定しやすいです。ただし、一人で判断する精神的な責任感と、移動による体力消耗は見落とされがちです。
雨の日も、真夏も、自転車や車で移動するのはなかなかハードです。
訪問看護に移ると「夜勤がなくてラクになった」と思われがちですが、ラクになる部分と、新しく増える負担の両方があります。
病院看護師の負担とラクな面
- 負担:夜勤・交代制で生活リズムが乱れやすい
- 負担:急変や緊急入院など、その場で一気に動く場面が多い
- 負担:受け持ち人数が多く、同時進行で気を張り続ける
- ラク:困ったらすぐ先輩や医師に相談できる
- ラク:物品・機材がそろっていて、その場で対応できる
訪問看護師の負担とラクな面
- 負担:ひとりで訪問し、その場で判断する責任の重さ
- 負担:移動(運転・自転車)そのものの体力消耗、夏や冬の天候
- 負担:事業所によってはオンコール(夜間・休日の電話当番)がある
- ラク:夜勤がない働き方を選びやすく、生活リズムを整えやすい
- ラク:1対1でじっくり関われ、流れ作業のような慌ただしさは少ない
「夜勤がつらい」人には訪問看護は大きな救いになりますが、“ひとりで判断する精神的な負担”は別物として増えます。ここを知っておくと、入ってから「思っていたのと違う」を防げます。
5. 給与・待遇の違い

一般的に、夜勤手当がある分、病院看護師のほうが給与は高くなりやすい傾向があります。訪問看護は夜勤がない代わりに、夜勤手当がつかないため、同じ経験年数でも月収に差が出ることがあります。
ただし、訪問看護ステーションによっては、訪問件数に応じた手当や、日祝の加算があるところもあります。転職を考えている方は、給与の内訳をしっかり確認することをおすすめします。
お金の話は地域や事業所によって本当に差が大きいので、あくまで“ざっくりした目安”として読んでください。
- 病院看護師:夜勤手当が収入の大きな柱。夜勤の回数で月の手取りが数万円単位で変わることも珍しくありません。逆に言えば、夜勤を減らすと収入も下がりやすいです。
- 訪問看護師:夜勤がなくても、日勤中心で病院時代と同等〜それ以上を狙える事業所もあります。オンコール手当や訪問件数による手当がつくところも。
ポイントは「夜勤手当で稼ぐ」か「日勤中心でも稼げる仕組みを選ぶ」かという働き方の設計が変わること。額面だけでなく、生活リズムも含めて自分にとっての“割の良さ”で比べるのがおすすめです。具体的な金額は求人によって大きく異なるので、気になる場合は実際の求人を見て比べてみてください。
6. こんな人に向いている|タイプ別チェック
どちらが「上」ということはありません。向き・不向きで考えるのが一番です。
病院看護師が向いている人
- 仲間と相談しながら働きたい
- 急性期のスピード感や、幅広い症例にふれたい
- 設備のそろった環境で、できることを増やしたい
訪問看護師が向いている人
- 自分のペースで段取りしながら働きたい
- ひとりの患者さんと、じっくり長く関わりたい
- 夜勤を減らして生活リズムを整えたい
「全部当てはまる」必要はありません。多く当てはまるほうが、今のあなたに合っている可能性が高いくらいの気持ちで見てみてください。
7. よくある質問(FAQ)
Q. 訪問看護は未経験でもなれますか?
A. なれます。新人や訪問未経験者の教育体制を整えている事業所も増えています。最初は先輩との同行訪問から始めるところが多いです。
Q. ブランクがあっても大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。むしろ日勤中心で生活リズムを整えやすいので、復帰の第一歩に訪問看護を選ぶ方もいます。ブランク可・教育体制ありの求人を選ぶのがコツです。
Q. ひとりで判断するのが不安です。
A. 最初から完全にひとり、ではありません。電話でステーションに相談できますし、迷う場面は先輩と共有しながら慣れていけます。気がかりを持ち帰って相談できる環境かどうかは、職場選びの大事なポイントです。
Q. 給料は本当に上がりますか?
A. 事業所によります。夜勤手当がなくなるぶん、日勤中心でも稼げる仕組みかどうかを求人ごとに確認するのが確実です。
おわりに|どちらが「正解」ではない
病院と訪問看護、どちらが良い・悪いということはありません。大切なのは、自分がどんな看護をしたいか・どんな働き方が自分に合うかです。
私自身は、利用者さんの「生活」に寄り添える訪問看護の仕事が、今の自分にとても合っていると感じています。でも、病院での経験があったからこそ、今の仕事ができているとも思っています。
もし訪問看護に興味がある方がいれば、まず見学から始めてみることをおすすめします。百聞は一見にしかずです。
「今の働き方を変えたい」「夜勤を減らしたい」「もう少しじっくり患者さんと関わりたい」と思っているなら、まずは求人を見てみるのがおすすめです。看護師専門のサービスなら、病院だけでなく訪問看護の求人も探せます。登録も相談も無料で、「まだ決めていない」段階でも気軽に使えますよ。
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