急変対応の本 2選|マンガで学んで、写真でイメトレする
「もし訪問先で患者さんが急変したら、私はとっさに動けるだろうか」
長く現場にいても、こういう不安は消えないものです。特にブランクがあって復帰するときには、技術への自信というより、「体がちゃんと動くかどうか」という感覚的な心もとなさがありました。
そんなときに手元に置いていた本を、2冊ご紹介します。
1冊目|ねじ子のヒミツ手技 2nd Lesson 森皆ねじ子/エス・エム・エス

まず最初に紹介したいのが、ねじ子先生のこの1冊です。
看護師なら「ねじ子」の名前を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。森皆ねじ子先生は現役の医師で、医療情報をマンガで解説するスタイルが人気のシリーズを執筆されています。専門用語をさらっと読めるように噛み砕いてあって、しかも内容がちゃんと実践的なのです。「むずかしいことをわかりやすく」という点では、右に出る人がいないと思っています。
目次はこんな内容です。
- バイタルサイン
- モニタリング
- 心電図
- 道端での心肺蘇生法
- 病院での心肺蘇生法
- ノドに異物がつまった
- 夜の骨折・脱臼
- 動物に咬まれた
- 熱傷
- 耳・鼻の救急
バイタルサインや心電図といった基本から、動物に咬まれたときの処置や指を切断したときの対応まで、幅広くカバーされています。
特に印象に残ったページ
とくに印象的だったのは、動物に咬まれたときの解説です。犬より猫の咬み傷のほうが重症になりやすい、という話が出てきます。猫の歯は細くて鋭く、深い刺し傷のような傷になりやすいのです。傷口が狭くて深いため菌が奥まで入り込みやすく、しかも猫はパスツレラ菌を持っていることが多いため、急速に炎症が広がることがあります。
こういう「ちょっと意外な事実」が、読んでいておもしろいのですよね。知識として頭に入りやすいし、印象に残ります。
訪問看護師として読むと
訪問看護師の立場から読むと、また違った視点があります。「道端での心肺蘇生法」の章は病院外での対応を想定していますが、訪問先で急変に立ち会ったときにも応用できる考え方が詰まっています。「ノドに異物がつまった」の章は、誤嚥リスクのある利用者さんを担当している方にぜひ読んでほしいと思います。ハイムリック法の手順がマンガでわかりやすく描かれていて、「もし目の前でこういうことが起きたら」というイメージがしやすいです。
なお、改訂版では心肺蘇生法のガイドラインが更新されています。改訂版を手に取るのがおすすめです。


2冊目|異変発生!ナースならできておくべき すぐ、やる技術 監修:三上剛人/Gakken

ねじ子本がマンガで楽しく学ぶ本だとすると、こちらはまったくアプローチが異なります。写真で見せる本です。
月刊ナーシングの増刊号として刊行されたこの一冊は、救急看護認定看護師である三上剛人氏の監修のもと、緊急場面をリアルな写真と具体的な手順で解説しています。
浴槽の中で意識を失っている患者さん。異物が刺さったままの状態。床に倒れている人。そういった場面が、写真でそのまま目の前に広がります。そして「発見した瞬間の状態」のすぐ後に、「次に自分がどう動くか」がステップで示されている。
テキストだけで「こういうケースがある」と読むのとは、感覚がまるで違います。
ブランク明けに書店で手に取った
私がこの本を最初に手に取ったのは、ブランクを経て現場に戻ろうとしていたころでした。写真をめくりながら読んでいると、「こういう状況なら、まずこう動く」というイメージが少しずつ鮮明になっていきました。復帰前の、静かな準備時間として、この本はとても良い使い方ができました。
トイレで倒れているのを見つけた日
この本を読んでからしばらくして、訪問先でご利用者さんがトイレで倒れているのを発見したことがありました。
狭い空間。すぐには全身が見えない状態。こういうとき、頭ではわかっていても「このまま動かしていいのか」「何から確認するのか」と迷いが生じやすいものです。でもそのときの私は、思いのほか落ち着いて動くことができました。
写真で見ていた場面と重なって、観察の順番と体の動かし方が自然に浮かんできたのです。「知っている」と「イメージできる」は、緊急の瞬間にはまったく別物だと、あらためて感じました。
現在はこの本、電子書籍での販売が中心となっています。スマートフォンやタブレットで読めるので、通勤中や休憩中になんとなくながめるだけでもOKです。

2冊の使い分け

| ねじ子のヒミツ手技 | 異変発生!すぐ、やる技術 | |
|---|---|---|
| 形式 | マンガ+解説 | 写真+手順 |
| 強み | 楽しく読める、知識が入りやすい | 場面がリアル、体がイメージしやすい |
| 向いている人 | 基礎から楽しく学びたい方 | 実践的なイメトレをしたい方 |
どちらか一方ではなく、2冊を手元に置いて、ゆっくり繰り返し「眺める」のが理想だと思っています。
緊急対応のイメージトレーニングは、一度読めば完成というものではありません。繰り返し見ることで、頭の中の「引き出し」がだんだん整理されていきます。訪問の現場は、発見してから数分間、自分ひとりで判断して動く場面があります。そのときのために、日常の中に少しだけ準備を積み重ねておく。この2冊は、そのための静かで頼もしいパートナーです。
