技術や手技をマスターする|『ねじ子のヒミツ手技 1st Lesson』レビュー
どんな人におすすめ?

看護師として働いていると、「手技はなんとなくできる。でも、なぜこの順番なのかは、実はよくわかっていない」という状態になることがあります。
忙しい病棟では、先輩の動きを見よう見まねで習得して、気づけば“体が覚えた”レベルで動けるようになっていく。それ自体は悪いことではないけれど、いざ後輩に教える立場になったとき、あるいはイレギュラーなケースに直面したとき、「なぜそうするのか」をうまく言葉にできないと、途端に詰まってしまうことがあります。
『ねじ子のヒミツ手技 1st Lesson』は、そういうときに助けてくれる本です。
- 新人看護師
- 復職・復帰を控えているかた
- 「今の部署ではこの手技の機会がほとんどない」という状況のかた
ただ個人的には、ある程度年数を重ねた看護師にもぜひ読んでほしいなと思っています。知識が体に染みついているからこそ、“なんとなくわかった気”になっている部分を、この本が言語化してくれるからです。
手技全体の流れを知ることが、難易度を下げてくれる

この本に収録されている手技はいくつかあります。
- 動脈採血
- 気道確保・気管内挿管
- 点滴(静脈路確保)
- 胃管挿入
どの手技も、注意点やコツがイラストと読みやすい文章でまとめられています。専門書のような重厚さはなく、パラパラとめくってそのページだけ読む、という使い方でも十分役に立ちます。
手技の前後に目を通しておくと、定着率がぐんと上がります。疲れて帰宅して、びっしりと文字が並んだ教科書を開く気力なんて残っていない夜でも、この本ならきっと読めます。そういう設計になっているんです。
手順全体の“地図”を頭に持っておくことが、実施中の落ち着きにつながります。「次にどこへ向かうのか」がわかっていれば、多少のイレギュラーにも対応しやすくなる。これはどんな手技にも共通して言えることで、この本はその“地図”になりえると思うのです。
動脈採血と、特定行為という現在地

動脈採血については、うっすら記憶があります。
新人だった頃、先輩が実施するのを介助したことが数回ありました。ただその後、転職した病院では「動脈採血は医師のみ施行」というルールになっていて、自分が直接実施する機会はなくなりました。正直なところ、ほっとしました。
現在(2026/5/24)は特定行為として位置づけられており、一定の研修を修了した看護師が実施できる枠組みに整備されています。
少なくとも手順と根拠を知っておくこと——それはどのような立場の看護師にとっても、意味のあることだと思っています。
胃管が、苦手でした

正直に言いますと、胃管が苦手でした。ねじ子先生は151ページでこんなことを書いています。
なぜ気管チューブは食道に入るのに、いざ胃チューブをやると気道に入っていくのだろうか
「ですよねー!」と、思わず声に出して同意しました。わかってくれてありがとうございます、ねじ子先生。
胃管の確認方法として、当時の現場では「空気を入れて、聴診器で音を確認する」という方法が使われていました。「ゴボゴボという音が聞こえたら胃に入っている」という説明を受けながら、毎回こう思っていました。——本当にこれは胃の中で出ている音なのかな。途中でチューブがとぐろを巻いていても、空気を送れば音は聞こえてしまうのでは?
根拠への疑問を持ちながら、確信のないまま手技を続けることの居心地の悪さ。胃液が引けるときはまだ安心できます。そうでないときは、不安を抱えたままそのケアを終えていました。
実際のところ、胃管留置時の誤挿入はゼロではありません。ある報告によれば誤挿入率は約4%で、そのうち2%は右肺内へ、残りの2%は食道内でループを形成していたとのこと。数字だけ見ると少なく感じるかもしれませんが、患者さんに直接つながるリスクとして考えると、やはり気になります。

合併症の報告も複数あります。穿孔、血腫、気道狭窄——高齢者や意識レベルの低い患者さんでは、抵抗や訴えが弱いぶん、異変の発見が遅れることもあります。


当時は論文を調べるには図書館まで行くしかありませんでした。今は自宅のPCからアクセスできます。Google Scholarにキーワードや論文名を入力すれば、多くの文献に無料でたどり着けます。便利になりましたよね。嬉しい限りです。
胃管のない部署で働きたい、と割と真剣に考えたことがあります。
勤務を終えてから、思い出すわけです。
私が胃管挿入したあの患者さん、最初の経管栄養が始まるとき「トラブルはなかっただろうか。」とか、
OP室に送ったあと、「胃管の先端の位置大丈夫だったかな」と胸をよぎる不安。今でも覚えています。
医師の手順を知ることが、介助の質を上げてくれる

この本には、看護師が直接実施しない手技も収録されています。気管内挿管がその代表です。
医師が実施する処置でも、手順を理解していると介助の質が変わります。次に何が必要か、どのタイミングで物品を渡すか、術者の視線がどこに向いているか——流れを追えるようになると、自然と先回りした動きができるようになってきます。
新人の頃は、同じ処置でも医師によって手順や使う物品が微妙に違うことに、ずいぶん戸惑っていました。「なぜ今回は違うのか」が判断できなかったのは、手技全体の構造をよく理解できていなかったからだと思います。この本を新人時代に持っていれば、あの戸惑いの一部は解消できていたかもしれません。
訪問看護に移ってからも、手元に置いています

現在は訪問看護に従事しており、医師の介助に入ることはなくなりました。それでもこの本は手元に置いています。技術の根拠を確認したいとき、後輩や学生に教える準備をしたいとき、あるいは「そういえばあの手技の手順ってどうだったっけ」とふと思ったとき——パラパラとめくります。そのたびに、新人の頃の自分がちょっとだけ蘇ってくるような気がします。
さまざまなステージの看護師さんたちに、一度は手に取ってほしい一冊です。
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